| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-389  (Poster presentation)

ニホンジカの出没状況と草地タイプとの対応関係の推定
Estimation of relationships to sika deer appearances and grassland types

*長雄一, 亀井利活, 上野真由美, 稲富佳洋, 宇野裕之(道総研・環境研)
*Yuichi OSA, Toshikatsu KAMEI, Mayumi UENO, Yoshihiro INATOMI, Hiroyuki UNO(HRO IES)

ニホンジカCervus nipponが多く出没する草地タイプ(草地内の牧草現存量、草地への雑草の侵入状況、河川等の周辺環境条件)を推定するため、北海道東部に位置する釧路管内白糠町・根室管内標津町の草地内にプロテクトゲージ(底面2m四方、高さ1m)を設置し、2019年の一番草の刈り取り前(6月)及び二番草の刈り取り前(8月)にゲージ内のイネ科牧草の草丈(それぞれ10本の平均)を求め、牧草現存量の指標とした。ゲージ内でのイネ科牧草及びマメ科牧草、雑草被度について植物種ごとに測定し、相対被度を算出した。また、ゲージの上に設置した自動撮影カメラにより、ニホンジカの単位時間あたりの撮影頻度(撮影枚数/日)を得た。さらに調査区ごとの環境条件(標高、広葉樹林・針葉樹林・河川・道路・鳥獣保護区からの距離)を求めた。一般化線形混合モデルにより、撮影頻度に影響を及ぼすと想定する牧草現存量、雑草の侵入状況、環境条件について、それぞれモデル評価を行った。その結果、白糠町では柵内の牧草現存量が大きい調査区で、より撮影頻度が増える傾向があった(固定効果の危険率p<0.001、以下同じ)。一方、標津町では、そのような傾向は見いだされなかった(p=0.546)。また、白糠町において、牧草被度に対して雑草被度の比率が高い調査区では、より撮影頻度が減る傾向が示された(p<0.001)。一方で、標津町においては、そのような傾向が見いだされなかった(p=0.340)。環境条件においては、河川からの距離のみが有意となり(p=0.005)、河川から遠い調査区では、撮影頻度が減る傾向が示された。これらの結果をもとに、白糠町及び標津町におけるニホンジカが出没しやすい草地タイプの違いについて考察を行う。


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