| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-390  (Poster presentation)

鳴き声調査による関東平野の田んぼのカエルの生息分布
The habitat distributions and abundance of paddy field-breeding frogs of the Kanto plain estimated by calling surveys

*松島野枝(東邦大学), 長谷川雅美(東邦大学), 西廣淳(国立環境研究所, 東邦大学)
*Noe MATSUSHIMA(Toho Univ.), Masami HASEGAWA(Toho Univ.), Jun NISHIHIRO(NIES, Toho Univ.)

 水田は自然湿地が失われてきた中で、人工的な湿地環境として湿地を利用する生物の代替生息地の役割を持つ。さらに、治水・遊水機能など多面的な機能も担っている。地域的な特性や事情を踏まえながら水田生態系の保全と他の機能との両立を目指すことを目標とする際に、保全の観点からは水田の生息環境としての特徴の客観的な評価を行い、その評価に基づいた水田の広域的な分布を可視化することが必要となるだろう。
 本研究では、水田に生息するカエル類を対象とし、野外調査と分布モデルから各種がどのような環境指標となるかを検討した。日本最大の平野である関東平野200地点で2018年5月と6月に各1回ずつ夜間に鳴き声の録音調査を行った。2分の録音データを10分割し、このうち鳴き声が得られた数を鳴き声回数とした。鳴き声の録音による調査は方法が簡単であり、市民による調査も期待できる。
 5種のカエルが確認され、これらの鳴き声回数を個体数の指標として解析を行った。このうちトウキョウダルマガエル、シュレーゲルアオガエル、ニホンアマガエル、ヌマガエル(国内外来種)において、地形、周辺の土地利用や水田の湛水状況などの環境変数から種分布モデルを構築して生息分布を、N-mixture modelを用いて生息量の分布を推定した。トウキョウダルマは河川周辺で水田の湛水が早いところに多く、シュレーゲルは森林率が高い谷津環境に多いという結果になった。これらの結果から、関東平野ではトウキョウダルマは氾濫原的な水田環境を、シュレーゲルは谷津的な水田環境を表す環境指標種といえるだろう。また、在来種数と生息量はともに関東平野の東部で多くなり、生息環境となる水田の分布に地域的な違いが見られた。


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