| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-398  (Poster presentation)

草木染で里山の色探し―市民協働での植物染色試料の収集と環境教育教材の開発―
A collaborative research between citizen and researcher for collecting natural plant dyes

*斎藤達也(i-nac)
*Tatsuya I. SAITO(i-nac)

 近年、日本国内では自然離れが進んでいる。農村部でも自然の利用は衰退し里山の荒廃も進行している。これらの課題への対応は急務であり、特に自然への興味を促し前述の問題を学べる環境教育ツールの開発は今後の環境保全を講じる上で重要である。草木染(植物染色)とは植物から得た色素を使い繊維を染める伝統技法である。身近な地域の植物を用いて簡単に実践可能なこと、自分で染めた布を持ち帰り可能であること等の利点を有することから、草木染は自然と親しむ体験型イベントや環境教育教材として近年注目されつつある。草木染イベントを開催する場合、鮮やかで多彩な色彩を得られるよう、事前に染料とする植物種の候補を挙げることが望ましい。そのため、個々の植物種の染色情報の拡充および教育現場や家庭で使用可能なように情報を整備することが重要である。しかし、染色情報へのアクセスが容易な種は限られている。
 本発表では、新潟県十日町市松之山で実施された市民協働の草木染調査「草木染で里山の色探し」の取り組みを紹介する。本調査の目的は、日本海側の里山に生育する野生植物の染色情報の集積およびその成果を編纂した教材冊子の発行・配布である。調査は十日町市立里山科学館 越後松之山「森の学校」キョロロのイベントの1つとして企画し、2017~2018年度に月1回(約3時間)の頻度で開催した。染色用生地には10 cm x 10 cmに切り分けた木綿布(濃染処理済)を、媒染剤にはカリウムミョウバンを用いた。染料とする植物は野外で採集し、染液は布の10倍量の植物体で作った。染色した布の色調はマンセル表色系の色見本により評価した。試料補填のため、著者や協力者による追加調査も上述と同様の手法により随時行った。結果として2019年9月時点で計150種(変種含む)の、部位等の相違を含めると225種類の染色試料を取得できた。発表では鮮やかな染め上がりの種および冊子化に向けた活動についても触れる。


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