| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-402  (Poster presentation)

琵琶湖における環境DNA法を用いた水鳥の網羅的生物調査手法の提案
Application of Environmental DNA Methods for Biosurvay of Waterbird in Lake Biwa

*三田村学歩(滋賀県立大学大学院, 未来生物学研究所), 原口大生(長浜バイオ大学大学院, 未来生物学研究所), 田端裕正(長浜バイオ大学大学院, 未来生物学研究所), 河田吉弘(長浜バイオ大学大学院, 未来生物学研究所), 嶺井隆平(長浜バイオ大学大学院, 未来生物学研究所), 植田潤(湖北野鳥センター), 谷口誠(谷口歯科医院)
*Gakuho MITAMURA(USP, Mirai Seibutsugaku Laboratory), Daiki HARAGUCHI(NIBT, Mirai Seibutsugaku Laboratory), Hiromasa TABATA(NIBT, Mirai Seibutsugaku Laboratory), Yoshihiro KAWATA(NIBT, Mirai Seibutsugaku Laboratory), Ryuhei MINEI(NIBT, Mirai Seibutsugaku Laboratory), Jun UEDA(Kohoku Wild birds Center), Makoto TANIGUCHI(Taniguchi Dental Clinic)

 環境DNA法は近年新たな生物調査法のスタンダードとして発展を続けている。2015年に発表された全魚種に有効なユニバーサルプライマーMiFishにより環境DNA法による魚類の網羅的調査法は格段に発展した。一方、魚類以外に関して特定の分類群に機能するユニバーサルプライマーは少ない。
 琵琶湖はラムサール条約湿地の1つである。ラムサール条約湿地に指定するための国際的な基準の1つとして、「定期的に2万羽以上の水鳥を支える湿地」という基準がある。琵琶湖には毎年様々な水鳥が約6万羽以上飛来しており、重要な渡り鳥の越冬地にもなっている。水鳥にとって重要な湿地にも関わらず、琵琶湖全域での一斉水鳥調査は日本野鳥の会による年1回だけである。また琵琶湖における水鳥調査は目視観察で行われており、多くの人の参加によって成り立っている。本研究では環境DNA法を用いて網羅的な水鳥調査が可能かどうかを検証した。琵琶湖のような大きい調査地で網羅的な生物調査を行うのに少ない人数で行える環境DNA法は有効である。
 2019年5月に滋賀県長浜市の湖岸沿いで100mごとに1L採取、3地点で行った。採取したサンプルはすぐに持ち帰り、濾過してDNA抽出した。抽出されたDNAは鳥類特異的ユニバーサルプライマーを用いてメタバーコーディング解析を行った。またサンプル採取地点において採取日の朝に目視観察による生物調査も行った。
 目視観察では16種の鳥類が観察された。目視観察された16種のうち環境DNAから12種検出された。12種中5種は種レベルで検出された。目視観察のみで検出された種や環境DNAのみ検出された種も存在した。
 本研究の結果は環境DNA法による水鳥調査が充分に行えることを示している。本研究に用いたプライマーはtRNAの一部を領域としているが、この部分に関して公開されている塩基配列情報は充分でない。塩基配列データベースの充実により、今後本手法がより有効になることが期待される。


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