| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-406 (Poster presentation)
周辺部の都市化が進む大学キャンパス里山は,孤立的であるが,教育施設の拡充による影響がない限り,比較的その環境が保たれるという特徴がある.一方,管理のあり方によっては,里山の質的状況は大きく異なってくる.玉川大学キャンパスは多摩丘陵の一角にあり,周辺を宅地が取り囲んでいる.同キャンパスには,コナラなどの落葉樹にアカマツやシラカシが混生する二次林,針葉樹植林,竹林,農地(水田,畑地),小規模ながら草地や湿地など,里山的景観が含まれ,農学部ではこれらを利用した実習教育や卒業研究などを行ってきた.これらのうち,二次林は,以前は薪炭林としての需要があったが,需要低下に伴い次第に放置されるようになった.1984年に行われた方形区調査では,下草刈りを継続している林分では草本層に約60種,低木層に5種以下,下草刈りを停止した林分では草本層に約40〜50種,低木層に約10種が記録され,中には東京都のレッドリストの草本が含まれた.その後,下草刈り管理が減少し20年以上放置された結果,2015年の調査では(調査区は一部異なる),草本層,低木層ともに5〜10種の記録にとどまり,レッドデータ植物がまだ見られるものの,決して多くはなかった.2015年ころから学生実習(授業)において二次林の下草刈りが順次再開され,下層植生の構成種は増加傾向にあるが,1980年代と比べ種数だけでなく組成的にも異なっている.これらには,アズマネザサの密生や,コナラなど高木の繁茂による,長期にわたる林床光条件の悪化が影響していると考えられる.上記の林分には,ネズミ類などの小動物が生息しており,その出現パターンとアズマネザサなど下層植生の状態には,一定の関係があることがわかりつつある.これらの成果をとりまとめ,報告するとともに,大学キャンパス里山の保全のあり方について言及する.