| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-407 (Poster presentation)
建築外構緑地として付設されたビオトープにおいて、来訪者と生物・自然環境との親和性と環境教育機能を向上させることを目的として、サイエンスコミュニケーションツール(以下、SCツール)の開発を行った。ビオトープの来訪者に,生き物とその生息環境の観察を促進させる4種類の観察補助ツールと解説ツールを制作した。観察補助ツールは、1. 生き物にアクセスしやすいアプローチ(安全・衛生的)、2. 誰でも“発見が楽しめる”サポート(達成感の提供)、解説ツールは3. 環境教育機能を満たす解説展示の観点で設計・制作を行った。本プロジェクトは、ビオトープの豊富な設計・施工実績を有する鹿島建設と、科学館等の空間体験の企画・設計を多く手掛ける乃村工藝社の協業によるものである。
製作したSCツールの有効性を検証するための実験を行った。既存ビオトープで、園路上にSCツールを設置してある状態,及び設置していない状態(従前)とで、来訪者に一定時間・範囲内を周遊してもらい,各状態のビオトープに対する満足度・印象評価,ビオトープ内で発見した生物分類群・種名に関するアンケートを実施した。実験対象は生産施設に付設されたビオトープで,来訪者は生産施設の社員・関係者とその子供(小中学生)である。各実験は2019年8月に2週間の間隔をあけて実施した。
実験の結果、SCツールの有無で発見した生物数に有意な差が見られた。ビオトープに対する満足度評価および印象評価はSCツールの有無で有意な差は見られなかったものの、SCツールが設置された状態のビオトープに対する評価の平均値が高い傾向が得られた。また,SCツールを設置した状態では,大人と子供で満足度や発見生物数など,全項目において有意な差は見られなかった。以上より,本開発のSCツールは、来訪者のビオトープ内の生物・自然環境への関心を高めるとともに、親和性の向上に一定の効果があることが窺えた。