| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-408  (Poster presentation)

地域の組織的な獣害対策に高校生が果たす役割ー放任柿の堆肥化実践を事例としてー
A study on roles of youth for the organized countermeasure in a local community. -the practice of a composting of abandoned persimmons.-

*工藤大智, 清野未恵子(神戸大学)
*Daichi KUDO, Mieko KIYONO(Kobe Univ.)

 本研究では丹波篠山市を対象地とし、獣害問題の深刻化を防ぐために、その原因となっている放任柿に焦点を当て、獣害問題に直面している地域住民が、放任柿の利用を習慣として促進する仕組みを明らかにすることを目的とした。そして、地域の農業高校である東雲高校の生徒と協同で柿の堆肥化実験や、完成堆肥を用いた生育実験に取り組み、柿の農業分野における可能性を実証した。また、これらの協同実践を経て、生徒の地域課題に対する意識の変容や、課題解決に向けた地域における組織のあり方について提案した。
 まず、堆肥化実験の結果から得られた知見は、柿は堆肥化することは可能であるが、堆肥化完了までに長い時間を要したことである。そして、柿の堆肥化を行う上で糠、竹炭が副資材として適していたことが分かった。課題として、堆肥内の温度が外気温に影響され、十分に上がらないことで堆肥化が停滞していたことが挙げられる。一方、柿の堆肥化実験より得られた堆肥(以下、柿堆肥)を使用した人参の生育実験では、人参100g中のカロテン量の結果において、無処理区や、牛ふん区に比べて柿堆肥区のカロテン量が多く、柿に含まれるカロテンが人参に転移したのではないかと考えられる。
 次に、協同実践を行った東雲高校の生徒5名を対象にグループインタビューを行った結果から、補佐役として取り組みに関わった生徒が複数の取り組みに参加することで、柿の堆肥化実験を続けることに対して前向きに考えていたことが分かった。
 最後に、地域住民を対象としているとは言え、農業高校生としか協同実践をしていない。しかし、その補佐役が、その組織の枠を超えて地域住民が属している集落や自治体の取り組みに参加し、両組織の取り組みを把握することで、高校生と地域住民の相互に影響する要素となるのではないだろうか。よって、上述の補佐役の可能性を実証していくことが、今後の獣害問題の解決に向けた課題となる。


日本生態学会