| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-417 (Poster presentation)
小笠原諸島では、特定外来種グリーンアノール(以下、アノール)により、固有の生物が絶滅の危機に瀕している。環境省は粘着トラップやフェンスを使用した防除事業を行っているが、トラップにおける固有種オガサワラトカゲの混獲や、フェンスにおけるアノールの侵入が問題となっている。本研究はトラップにおけるアノールの誘引とオガサワラトカゲの忌避、およびフェンスにおけるアノールの忌避効果を高めるために有効な色を明らかにすることを目的とした。アノールのメス14個体に対し、6色(紫、青、緑、黄、茶、赤)の中から異なる2色の色紙を提示して選択させる実験を行った。静置ケースの出口に2色の色紙を並べて貼り、アノールがケースを出てから最初に四肢をつけた色を選択した色とした。提示の順番および左右の配置はランダムに設定した。さらに、コントロールとして色紙を使わない実験を行った。Bradley-Terryモデルによる選択性の順位付けを行ったところ、茶、緑、赤、黄、紫、青の順となった。このうち、選択性の高い茶、低い青、現行のトラップの赤の3色を用いて、オガサワラトカゲ14個体について同様の実験を行った結果、選択性は赤、茶、青の順であった。色紙を使った全ての実験結果、コントロールともに、左右の選択性に偏りは認められなかった。また、選択にかかる時間や、選択後の色紙上の滞在時間は両種とも色によって異ならなかった。アノールによる青の選択性が低かったことから、遮断フェンスを青に着色すると、アノールの隔離や分散阻止の効果を高める可能性がある。また、アノールは赤よりも茶の選択性が高く、オガサワラトカゲは茶よりも赤の選択性が高かったことから、トラップを現行の赤から茶に変えると、オガサワラトカゲの混獲を現在よりも低く抑えられる可能性がある。