| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-418  (Poster presentation)

市民参加型調査による大阪府における外来魚の記録
Records of alien fishes by public participation in research project in Osaka Prefecture, Japan

*松井彰子(大阪自然史博)
*Shoko MATSUI(Osaka Mus. Nat. Hist.)

 外来生物の侵入が問題視されるようになって久しいが、各地で新たな外来生物の記録は後を絶たない。大阪市立自然史博物館では、外来生物の分布を市民参加で調査するプロジェクトを実施してきた。魚類では、外来生物に対する普及・教育と、大阪府における(1)カダヤシとミナミメダカの分布状況の比較、(2)ドジョウの遺伝的系統の分布状況とその変遷の解明、(3)外来魚リストの作成を目的とし、市民参加調査による標本収集、一部の標本の遺伝子解析、博物館収蔵標本情報の収集、および文献調査を行った。市民参加調査は2017年から2019年に実施し、各自で採集調査と、調査シートへの記入(採集環境の記録)を行ってもらった。
 その結果、(1)大阪府において、カダヤシは府中央部の平野部に多く北部や南部の山地では少なかったのに対し、ミナミメダカは、逆に府中央部では少なく北部や南部に多い傾向が明らかとなった。両種の分布傾向は、ここ10年ほどでそれほど急激には変化していないと思われ、その要因として、カダヤシが生息しやすい平野部の環境にはすでに広がりきっており、山間の流れの速い環境などには分布を拡大しにくい可能性が考えられた。
 (2)大阪府には2系統のドジョウ(在来系統と中国大陸原産の外来系統)が分布しており、在来系統は局所的である一方、中国大陸系統は府内の広範に分布していることが明らかとなった。さらに、両系統間での交雑が進み、在来系統のみの純粋な集団は大阪府北部の非常に限られた水域にしか分布していない可能性が示された。
 (3)本研究でリストアップされた大阪府内の外来魚は40種で、このうち2019年現在で定着している可能性が高いまたは今後の定着が強く懸念されるものが23種、定着していないと思われるものが17種であった。近年急激に分布拡大している国外外来種や、在来種・系統と交雑している国内外来種・飼育品種が含まれており、在来生物への脅威は一層高まっている状況が示された。


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