| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-PC-422  (Poster presentation)

佐鳴湖におけるミシシッピアカミミガメ調査とニホンイシガメ交雑問題 【B】
Investigation on the distribution of red-eared slider turtles at Lake Sakaru and hybridization problems of Mauremys japonica. 【B】

*戸田三津夫(静岡大学, 昆虫食倶楽部), 小林芽里(昆虫食倶楽部), 夏目恵介(昆虫食倶楽部), 伊藤信一(浜松学芸高等学校), 大月悠雅(浜松学芸高等学校), 大橋和義(静岡大学), 東川和喜(昆虫食倶楽部), 石津成一(昆虫食倶楽部), 西岡愛香(昆虫食倶楽部)
*Mitsuo TODA(Shizuoka University, Konchushoku Club), Meri KOBAYASHI(Konchushoku Club), Keisuke NATSUME(Konchushoku Club), Shinichi ITO(Hamamatsu Gakugei High School), Yuga OTSUKI(Hamamatsu Gakugei High School), Kazuyoshi OHASHI(Shizuoka University), Kazuyoshi AZUMAGAWA(Konchushoku Club), Seiiti ISIDU(Konchushoku Club), Aiko NISHIOKA(Konchushoku Club)

佐鳴湖は浜松市西部に位置し、南北約2㎞、東西0.6㎞、平均水深2mの汽水湖である。昆虫食倶楽部では2017年から3年間、佐鳴湖とその流入河川で淡水ガメの生息調査とミシシッピアカミミガメ(以下アカミミガメ)の駆除活動を行ってきた。調査は4月~10月に月1~2回、10~20カ所に浮島型ワナとトラップを設置し、一部ではタモ網を使った。トラップはカニかごを流用し1日目に餌を入れて投入、2日目に引き上げてカメの種類、雌雄、甲長、腹甲長、捕獲場所ほかを記録し、アカミミガメは冷凍殺処分した。その結果、3年間で計1230匹のカメを捕獲し、906匹のアカミミガメを駆除した。
アカミミガメは、1年目に94%を占め、2年目は79%、3年目は51%まで減った。それに対し、クサガメの割合は、4%→27%→34%と増加し、1年目は湖内で捕獲できなかったイシガメの割合が、10%→12%であった。また、アカミミガメのサイズは、1年目は大型個体が多く、徐々に中型、小型の個体も捕獲されるようになり、3年間の駆除の有効性が確認できた。
一方で1年目は識別の認識できなかったが、2年目、3年目はイシガメ×クサガメ、ハナガメ×クサガメの交雑個体も数個体発見された。また、下流の流入河川で数年前にイシガメの遺棄が目撃され、佐鳴湖水系でもイシガメが遺棄された「疑惑」がある。静岡県のレッドリスト(2018)ではイシガメは準絶滅危惧(NT)であり、イシガメの遺伝的多様性の保全には、クサガメの駆除あるいは移動、イシガメの地域個体群の遺伝子調査も行う必要があると考えられる。
昆虫食倶楽部は民間の団体であるが、静岡大学と協力して駆除したアカミミガメの解剖実習や勉強会を行うなど外来種についての普及啓発活動も行っており、引き続き広く市民を巻き込んだ形で調査・駆除活動を継続していきたい。


日本生態学会