| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-426 (Poster presentation)
ハッカチョウ(Acridotheres cristatellus)は、中国南部から東南アジアに分布するムクドリ科鳥類で、沖縄県以外の日本では、飼い鳥由来の外来生物と考えられる。日本では、1970年代から繁殖記録がある。
2020年時点で、香川県、兵庫県、大阪府、神奈川県では、継続的に複数つがいが繁殖しており、定着個体群が存在していると判断できる。このほかに、奈良県、京都府、滋賀県、東京都などでも繁殖記録がある。関東地方では、過去に埼玉県や千葉県での繁殖記録があるといい、現在詳細情報を探しているところである。
東日本では、かつて東京都で繁殖していたが現在は見られなくなり、神奈川県でのみ継続的に繁殖している。それも横浜市周辺に限られ、分布は20年以上にわたってあまり変わっていない。
一方、西日本では様相がまったく異なる。1980年代に兵庫県、1990年代に香川県にハッカチョウの個体群が定着し、それが2000年代に大阪府、2010年代に岡山県と定着域が拡大している。さらに2010年代後半には、京都府や奈良県でも繁殖が記録されるようになってきている。分布の拡大傾向は継続していると考えられる。
このように西日本のハッカチョウは、分布が拡大傾向にあり、その動向が注目される。しかし、とくに定着初期は、どこに出現するのか予測がつかず発見が困難である。分布拡大の状況把握には多くの目が必要になる。幸い、ハッカチョウは、市街地周辺で活動するため、市民参加で外来生物の定着プロセスを追跡しやすい材料である。ここで紹介した結果も多くの市民から提供された情報に基づく。
今後もハッカチョウの分布の変化を追跡していきたいと考えている。もし、ハッカチョウを観察したら、あるいはここに述べた以外の情報に心当たりがあれば和田(wadat@mus-nh.city.osaka.jp)までお知らせ頂けると有り難い。