| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-427 (Poster presentation)
ナガエツルノゲイトウ(Alternanthera philoxeroides (Mart.) Griseb.)は南アメリカ原産のヒユ科の多年生草本であり、河川や水湿地などに群生する帰化植物である。在来植物との競合に加え、水利施設の維持管理や農業生産の上からも極めて注意すべき植物として、環境省の特定外来生物に指定されている。埼玉県では2011年まで確認されていなかったが、2017年に荒川水系入間川の支流である越辺川で、翌2018年には同水系の芝川で初確認された(上原2019)。埼玉県での本種による農業被害などの報告はまだないが、近隣の県での実情を踏まえると今後、影響が出てくることが懸念される。そこで、初確認された越辺川において侵入初期におけるナガエツルノゲイトウの分布の現状を調査した。
調査には東京電機大学理工学部にて開発されたモバイルアプリケーション“MappEnv(Mobile application to collect Environmental samples)”を使用した。これはAndroidOSを搭載し、カメラとGPSセンサを内蔵した端末上で動作し、アプリを用いて対象を撮影することで、対象の位置と周囲の環境を含んだ画像を容易に収集できる。本研究では自転車とMappEnvを搭載したスマートフォンを学部4年生に提供し、ナガエツルノゲイトウの花期にあたる2019年7月から9月末にかけて越辺川とその支流における本種の分布を調査した。この結果、ナガエツルノゲイトウは越辺川の支流である大谷木川を起点とし、入間川との合流地点まで連続的に分布することが明らかとなった。また周囲の環境から護岸工事のされている人工的な環境だけでなく、在来種の多く生育する自然環境にも分布することから、本種はすでに在来種との競合などの影響を与えていることが考えられた。