| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-428 (Poster presentation)
鳥獣害対策においては、出荷する作物以外にも、規格外や傷等の理由で捨てる果実(以下、廃果)や野菜の収穫残渣に野生動物を餌付かせないことの重要性が指摘されてきたが、どの程度良い餌となっているか具体的に明らかにした研究は少ない。そこで発表者らは、特定外来生物アライグマProcyon lotor、外来種ハクビシンPaguma larvataを含む中型哺乳類の餌としての廃果の価値をエネルギー獲得効率等の側面から評価することを目的に研究を実施してきた。これまでに、果樹および果実的野菜の収穫量第一位であるイチゴの廃果が、中型哺乳類にとってエネルギー獲得効率の高い餌となっていることを明らかにした。本研究では、大型の栽培果実であり、庭木としても多い柿の廃果について、中型哺乳類による利用実態を明らかにすることを目的とする。
茨城県内の柿園に隣接する廃果場に自動撮影カメラを設置し、主に動画撮影1分間、センサーの反応間隔を0秒に設定した。この結果、アライグマ、ハクビシンを含む中型哺乳類が夜間に高頻度に廃果場を利用した。疥癬にり患したタヌキNyctereutes procyonoidesは昼間にも利用され、廃果に依存していることがうかがわれた。訪問頻度が高い種は季節により変化したが、廃果場は冬期間にも複数種が高頻度に利用できる餌場となっていた。柿を含む栽培果実採食時のエネルギー獲得効率は高く、中型哺乳類の栄養状態の好転、ひいては個体数増加や被害を助長させる可能性がある。外来種の防除上、廃果であっても餌付けない対策の推進が重要である。