| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-430 (Poster presentation)
近年、遺伝子組換え生物の利用が行われる一方、遺伝子組換え生物が環境に与える影響についての懸念も高まっている。そこで、遺伝子組換え生物の使用等により生じる生物多様性への影響に関する科学的知見の充実を図るために、除草剤耐性をもつ遺伝子組換えナタネ(セイヨウナタネ(Brassica napus)に由来。以下「除草剤耐性ナタネ」という。)の生育等に関するデータの収集が農林水産省、環境省等により継続的に行われてきた。
本調査(環境省請負業務)では、主要なナタネ輸入港のうち、セイヨウナタネ及び除草剤耐性ナタネが比較的数多く生育している3地域(鹿島、四日市、博多)に絞って調査地を設定し、河川敷内とそこを通過する橋梁沿いにおいて、セイヨウナタネの生育状況の調査を行ってきた。四日市地域では平成21(2009)年度から開始し、博多地域と鹿島地域では平成23(2011)年度から開始し、平成30(2018)年度にかけて調査を実施した。
調査の結果、セイヨウナタネは橋梁の道路沿いにおいて四日市地域、博多地域、鹿島地域の3地域で生育が確認された。四日市地域では河川敷においても継続的に生育が確認された。一方で博多地域、鹿島地域の河川敷では、年度によっては生育が確認されず、平成30(2018)年度の調査では生育が確認されなかった。河川敷におけるセイヨウナタネの分布は橋梁付近に限られており、多くの場合は橋梁から10m未満であった。また、セイヨウナタネの群落の規模は小さく、平成30(2018)年度の結果ではそのほとんどが20個体以内であった。四日市地域の河川敷におけるセイヨウナタネの群落数及び総個体数は、年変動が激しい傾向が見られる一方で、いずれの年度においても分布は橋梁周辺に集中していたことから、世代交代による種子よりもこぼれ落ち種子に依存していると考えられた。このことから、これまでのところ除草剤耐性ナタネ含むセイヨウナタネが野外の生態系において広がる傾向はないと考えられた。