| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-PC-432 (Poster presentation)
森林生態系に侵入し、大きなバイオマスを占める外来樹木は、その植物群集構成と生態系機能を大きく改変する可能性がある。これらの外来樹木の駆除は、必ずしも元の群集構成と生態系機能を回復させるわけではない。本研究では、小笠原諸島の森林生態系で広く優占する外来樹木トクサバモクマオウの侵入と駆除に伴う植物群集構成と土壌水分環境の変化を明らかにした。
調査は、父島列島西島のトクサバモクマオウの優占の程度が異なる森林で実施した。除草剤を用いてトクサバモクマオウを枯殺し立ち枯れ状態にした地域(駆除地域、10地点)と対照地域(8地点)において表層土壌(深さ約5cm)における体積含水率を約1年間継続的に測定した。また、各地点で20×20mの範囲に出現した全樹木個体(立ち枯れ個体も含む)の胸高直径を測定した。
樹種別の胸高断面積合計に基づいた多次元尺度構成法とクラスター分析の結果、トクサバモクマオウが優占する群集では、トクサバモクマオウの駆除の有無でその種構成が明確に区分された。一方で、トクサバモクマオウの優占の程度が低い群集では、トクサバモクマオウの駆除の有無による種構成の違いは小さかった。その結果、トクサバモクマオウが優占する対照地域の森林(以下モクマオウ群集)、トクサバモクマオウが優占する駆除地域の森林(駆除群集)、在来樹木が優占する森林(在来群集)に区分された。
表層土壌の体積含水率は、3つの群集タイプ間で有意に異なった。体積含水率は、在来群集、駆除群集、モクマオウ群集の順に高い傾向が見られた。降水量が5mm/日以下の連続した期間における体積含水率の最小値は、モクマオウ群集は在来群集よりも低い傾向があった。駆除群集における体積含水率の最小値は、群集内で大きなばらつきが見られた。
以上の結果は、トクサバモクマオウの侵入と駆除は、土壌水分環境と植物群集構成を大きく改変する可能性を示唆する。