| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-03 (Poster presentation)
<目的>
近年日本各地で、ニホンジカの個体数増加に伴いニホンヤマビル(Haemadipsa japonica)の個体数が増加し、ヒトの吸血被害が拡大している。ヤマビル防除の一環として生息場所の落ち葉かきが有効とされているが、冬季における生態は不明な部分が多く、自然界における越冬個体発見の報告例はない。そこで千葉県君津市及び鴨川市において冬季ヤマビルの越冬生態調査を行うことを目的とした。
<方法>
千葉県君津市及び鴨川市の調査区においてコドラートを設定し、L層、F層及びH層、A層の3種の層を採取、ソーティングにより探索を行った。越冬個体発見を受けて、1年後に同調査区に赴き、フィールドにて再度ヤマビル探索を行った。また、ラボにおいて4℃に制御された環境下で飼育を行った。
<結果>
4区画のうち君津市で採取したL層にて越冬個体を発見した。またフィールド調査において君津市のA層の上部で発見し、自然界で初めて生きた越冬個体を発見した。越冬ヤマビルをラボに持ち帰り、強制越冬させた結果F層とH層の境あたりで冬眠した。
<考察>
ヤマビルは冬季に冬眠し、風に飛ばされることが少なく、かつ吸着できる大きさの落ち葉の下にいることが分かった。また、発見場所は獣道沿いであったため、冬眠から覚めた後すぐに吸血できるよう待機しているとも考えられた。A層~L層で越冬しており、冬季にL層だけでなくF層及びH層まで落ち葉を取り除くことで次年度のヤマビル発生率を大きく低下させることができると考えられる。