| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-08 (Poster presentation)
武蔵高等学校中学校(東京都練馬区)には現在確認されているだけで900点以上の液浸標本が収蔵されている。本研究では、校内にずっと残されているがあまり手をつけられず、わかっていないことの多い標本たちの由来を明らかにするために、両生類31点と爬虫類49点の液浸標本の整理および同定を行った。十分なラベル情報のない標本も半数程度あったが、1920年代の東京での採集標本があり現在ではほぼみることができなくなったような種類、パラオ島・マレーシア等海外からの寄贈品、かなり特徴的な見た目をしているが同定できなかった種類など興味深い標本が多数見つかった。その中で注目すべきは、日本爬虫両棲類学会の会長を務めたこともある動物学者の岡田弥一郎らが約90年前の本校周辺(練馬、上板橋など)に生息していた動物を記録し当時の情報を載せ、その一部の写真を図版として掲載した目録の「FAUNA MUSASHINENSIS(1929年)」と一致する標本の発見である。今回整理した中で顔と模様の似たシロマダラやポーズ・指の形の似たツチガエルなど数個の標本が、FAUNAに載っているモノクロ写真と一致していた。これらのことから、ラベルのない標本についても由来の推定ができた。また、液浸標本の中には当時貼られたと思われる整理番号のような数字や、類似する茶色く変色した古いラベルが残っているものもあった。この特徴はFAUNA図版掲載標本以外の数十個の標本にも入っていたため、似たようなラベルの入っている標本の多くは約90年前に採集されたものである可能性がある。今後、それらの標本のなかに現在の東京や日本では絶滅が危惧される、あるいは絶滅した種類の生物が確認されれば、武蔵高等学校の標本の中に、ほかにも貴重な資料がみつかるかもしれない。