| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-10 (Poster presentation)
尼崎運河は閘門式防潮堤(昭和30年完成.)で大阪湾と仕切られた閉鎖的な水域である.この閘門式防潮堤は船舶の航行が可能である.尼崎閘門は淀川河口と武庫川河口の中間に位置し,それぞれと約1.5kmしか離れていない.チチブTridentiger obscurusは両側回遊魚であるので尼崎運河と周辺河川(淀川・武庫川など)のチチブ個体群は同じ遺伝的特徴を持つのではないかと考えた.『尼崎運河と周辺河川ではチチブの遺伝的形質に差は見られない.』と仮説を立てて,これを検証することを目的とした.チチブをエタノールで固定し,DNA抽出をした.PCR法にてDNA増幅し,シーケンスを行った.核DNAのgpr85領域を解析してチチブであることを遺伝的に確認した.次にミトコンドリアDNAのcyt b領域のハプロタイプ(約600bp)を決定した.ハプロタイプ多様度(h)と塩基多様度(π)を求めた.また,両個体群間の遺伝的変異の程度を示すペアワイズFst値を求めた.武庫川8個体,尼崎運河15個体の解析が終了した時点では8個のハプロタイプが確認され,両個体群間には有意な差が見られた.仮説が否定される可能性が出てきたわけであるが,さらに解析個体数を増やし,より信頼のおける結果を報告する予定である.