| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-19  (Poster presentation)

ハエトリグモは右利き? 左利き? ~ハエトリグモの行動パターンの数値化および分析~
In which direction is jumping spidaer better at moving,right or left? ~dizitization and analysis of jumping spider's behavior patterns~

*児玉拓海, 伊東秀, 大月悠雅, 黒石晶(浜松学芸高等学校)
*Takumi KODAMA, Syu ITO, Yuga OTSUKI, Syo KUROISHI(Hamamatsu Gakugei High school)

 本研究ではハエトリグモ科の1種であるチャスジハエトリPlexippus paykulliの視覚刺激への反応について明らかにするために、チャスジハエトリ(以下、クモ)の眼前にある物体の大きさと距離の2点に着目して実験を行った。
1つめの実験は、獲物に見立てた物体の大きさに着目した。球形に成型した紙粘土に磁石を入れたもの(以下、実験球)とクモとを同じ容器内に入れた。その後、クモの体軸に対して垂直方向に、容器の底から磁石の力で実験球を動かした。磁石は1秒当たり15mmの一定の速さで動かした。実験球の大きさは、クモから10mm離れた直径10mmのものを10として評価した(以下、相対直径)。実験球の直径は、クモの体長(平均7.5mm)の2/3倍、4/3倍、1倍、2倍、3倍と変えながら、実験球の大きさの変化にともなう反応を調査した。
2つめの実験は、クモと実験球までの距離に着目した。クモから実験球までの距離を、全長の1/2倍、4/3倍、1倍、2倍、3倍と変えながら、クモの体軸に対して垂直に磁石を動かし、距離の変化にともなう反応を調査した。実験球までの距離は、クモの正面に実験球がある状態で、クモの頭部と実験球とのあいだの距離と定義した。クモの行動は観察、捕食、逃避、静止、移動に分類して記録した。実験には、チャスジハエトリ3個体(雄2個体、雌1個体)を用いた。
 クモの行動は、合計186回観察でき、そのうち観察(116回)、捕食(15回)、逃避(23回)、静止(4回)、移動(28回)であり、全行動のうち観察行動の占める割合が62.4%と高かった。相対直径が大きくなるにつれて、捕食行動の割合は10.5%、5.3%、0%と減少し、観察行動の割合は72.6%、52.6%、25.0%と急激に減少した。一方で、逃避行動の割合は、3.2%、18.4%、50.0%と、相対直径が大きくなるにつれて急激に増加した。本研究より、チャスジハエトリは眼前にある物体の相対直径が大きくなるにつれて、捕食・観察行動から逃避行動へと刺激に対する反応様式を切り替えていることが推測できる。


日本生態学会