| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-20 (Poster presentation)
火山の噴火によって溶岩が流れ出たあとの場所は裸地となり、そこから植生遷移(一次遷移)が生じる。本校では2015年から2016年にかけて、遷移に伴って動物相はどのように変遷していくのか、伊豆大島において遷移の段階ごとに生息しているアリの種類に着目して調査を行った。このときは、遷移に伴ってアリの種類が多様化していくことを確認した。また、2016年初夏の調査では、スコリア原においてクロヤマアリの姿が確認されている。
調査地の伊豆大島は火山島であり、島の中央に位置する三原山は、ここ数十年の間にも何度か噴火を繰り返している。そのため、三原山周辺では遷移の様々な段階がみられる。スコリア原とは、三原山の火口周辺でスコリア(火山の噴出物の一種)が広がっている地帯のことを指し、先駆植物であるハチジョウイタドリを中心としたパッチが所々に形成されている。
クロヤマアリは、ヤマアリ科ヤマアリ属に属する種である。日本の広い範囲に生息しており、体長は4.5〜6㎜、体色は灰色がかった黒色をしている。今回、この種について取り上げたのは、遷移の初期段階からみられる数少ない動物の中でも取り分け容易に観察できるからである。多くの生物にとって生息するのに適した環境とは言い難いスコリア原において、クロヤマアリはどこに営巣し、何を食糧として生息しているのか、調査によって明らかにしていく。
今回の調査では、スコリア原においてクロヤマアリ及びその巣を見つけ、生息域を確認した。また、巣から出てきた個体の追跡などにより、クロヤマアリが食糧としているものについても確認をした。その際、採取可能な餌を持ち運んでいる個体がいた場合は吸虫管を用いてその餌を採取し、それを同定した。