| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-24  (Poster presentation)

ホウジャク亜科のホバリング飛行の仕組みを解明する
The solution to the mecanism of the  Macroglossinae's hovering flight

*松野拓実, 櫻井竣悟(岐阜県立岐山高等学校)
*Takumi MATSUNO, Shyungo SAKURAI(Gizan Highschool)

  鱗翅目ホウジャク亜科に属する昼行性の種は、ガでありながらホバリング飛行能力をもつ。また、昨年までの研究により、ホウジャク亜科とハチドリは、どちらもホバリング飛行時に尾部の器官を折り曲げ、くの字の体勢をとっているということが分かっている。
 今回の実験では、「くの字の体勢にはどのような効果があるか」を調べるために、くの字の体勢をとっていない模型、くの字の体勢をとっている模型を作成し、この模型にホバリング飛行時の羽ばたきによって起こる風を再現した風を当てることで比較した。ホウジャク亜科はホバリング飛行時に、地面と水平に近い角度で前後に羽ばたいているため、翅の打ち上げ(リードストローク)時は、模型の後方から、翅の打ち下ろし(ラグストローク)時は、模型の前方から地面と水平に風を当てることによって再現した。
 くの字の体勢をとっていない模型の場合、風はリードストローク時、ラグストローク時共に体を沿うように流れたが、くの字の体勢をとっている模型の場合、ラグストローク時には腹部を急な角度で風が流れ、リードストローク時には腹部に空気の渦がみられた。このことから、くの字の体勢をとっている場合、リードストローク時の風とラグストローク時の風が同時に起こることで、胴体の下に下向きの風が発生し、前後方向に羽ばたいているにも関わらず浮くことができているのではないかと考えた。
 さらに、前後方向から同時に風を流すことで、リードストローク時とラグストローク時の風が同時に起こる場合を再現し、検証した。その結果、胴体の下に下向きの風が実際に発生したため、上記の考察は正しかったと言える。
  今後は、現在考えられている「全ての空気の渦が下向きの風に返還されるのではなく、一部が残ることにより、体を安定させている」という仮説を検証することや、「くの字や胴体の角度と下向きの風の関係性」などについても研究を進めていきたい。


日本生態学会