| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-29 (Poster presentation)
近年,マイクロプラスチックとよばれる微小なプラスチックごみによる汚染が注目され始めている.このマイクロプラスチックは,摂食した生物に腸閉塞などを引き起こさせるほか,環境中の有害物質を吸着する可能性もあるとして,環境への悪影響が懸念されている.本研究では,海水魚によるマイクロプラスチックの認識と摂食時の傾向を明らかにすることを目的とし,大阪湾に面した2地点で調査を行った.採集された魚20匹からは計16個のマイクロプラスチックが検出された.摂食方法別にみると,プランクトンをエラで濾過して摂食する濾過摂食の魚種からは,それ以外の魚種に比べ重量比で10倍程度のマイクロプラスチックが検出され,摂食方法がマイクロプラスチックの摂食量に多大な影響を与えていることが示唆された.大きさ別では,検出されたマイクロプラスチックのうち,固形物は魚類が視認できるものの,繊維状のものは,その細さから視認不可能である可能性が高いことが分かった.また,全長の小さいカタクチイワシから確認されたマイクロプラスチックの大きさは,周辺海域のものと比較して小さかったことから,魚類の体のサイズも,摂食するマイクロプラスチックに影響を与えている可能性が示唆された.形状別にみると,非濾過摂食の魚種からは繊維のみが見つかり,固形物は認められなかった.非濾過摂食の魚種は,視認できるマイクロプラスチックの摂食を避けていることが示唆された.一方で,マイクロプラスチックの色が魚類による摂食に影響を及ぼしている根拠は確認されなかった.