| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-30  (Poster presentation)

水族館のサメはなぜ魚を食べないのか 捕食者と被食者の学習能力から関係性を変える
Why aquarium sharks don't eat fish

*中村彰吾, 朝比奈奎人, 八田一輝, 兵頭新大, 伊藤綾佑, 熊谷孟樹, 齋藤祐頌, 武内颯成, 山田青, 山本大嗣, 山下春日(浜松学芸高等学校)
*Shogo NAKAMURA, Keito ASAHINA, Kazuki HATSUTA, Arata HYODO, Ryosuke ITO, Haruki KUMAGAI, Yusyo SAITO, Ryoma TAKEUCHI, Ao YAMADA, Taishi YAMAMOTO, Kasuga YAMASHITA(Hamamatsu Gakugei High school)

一般的に、狭い空間において捕食者と被食者とが共存し続けることは困難であるが、水族館の水槽内では共存が成立している。本研究では、捕食者の視覚と嗅覚を利用した学習能力の高さをもとに解析することで、狭い空間で捕食者と被食者が共存できる理由を解明することを目的とする。
 本研究では、捕食者としてニジマス Oncorhynchus mykiss (体長20cm)、被食者としてテナガエビ Macrobrachium nipponense (体長1.5cm)を対象として行った。1つめは、捕食者に視覚刺激は届くが嗅覚刺激は届かない条件下(嗅覚刺激なし条件)で実験を行った。ニジマス1個体とテナガエビ4個体を大型水槽内(60×30×25cm)に入れ、匂いを通過しないガラス製の小型水槽(15×8×11cm)を大型水槽内の水に浸した。2つめに、嗅覚刺激は届くが視覚刺激は届かない条件下(視覚刺激なし条件)で実験を行った。ニジマスの入った大型水槽の一部を水切りネットで三重にして区切り、ニジマスからテナガエビの姿は確認できないが、匂いを含む水が通過できるようにした。結果の解析は、2つの実験ともにニジマスの捕食量と捕食行動の回数および時間で評価した。
 本研究では捕食者と被食者が共存するようすが確認できた。嗅覚刺激なし・視覚刺激なしの実験においても、空腹状態のニジマスは、テナガエビを水槽に投入後平均1.1秒(N=8)で捕食した。嗅覚刺激なし実験では、ニジマスは視覚によってテナガエビを餌だと認識して捕食行動を示したが、小型水槽のガラスを感知することで捕食できないことを学習した。視覚刺激なし実験では、匂いを感知して小型水槽に接近し、20分間に平均3.5回テナガエビの捕食を試みた。その後、平均30.3分後には水槽に近づかなくなった。ニジマスは視覚刺激や嗅覚刺激をもとに学習を繰り返して、捕食行動を起こしていた。水族館の魚は、十分に餌を与えるかまたは被食者を捕食できない状況下に置き学習させることで、共存できるのではないだろうか。


日本生態学会