| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-31  (Poster presentation)

チョウの翅の撥水性は部位や種によって異なるのか?
Comparison of Water Repellency Depending on Butterfly Wings or Species

*中山和奏(神戸大学附属中等)
*Wakana NAKAYAMA(Kobe Univ. Secondary)

1.はじめに
強い撥水性で知られるハスの葉に比べ、チョウの翅は撥水性に加え軽さやしなやかさ等の特徴がある。よってチョウの翅はハスの葉にはない仕組みがあると考え分析した。

2.背景技術
ハスの葉の撥水性はロータス効果と呼ばれ、表面に細かい凹凸があり、凹凸間隔が10µm以下だと、そこに水が入れず撥水する(Cassie-Baxter理論)。撥水性は静的撥水性を表す水接触角と、液滴除去性を表す滑落角で評価できる。水接触角は静止液体の表面が固体に接する場所で液面と固体面とのなす角であり、滑落角は傾斜時に水滴が滑り落ち始める角度である。水接触角は大きい角度、滑落角は小さい角度の方がよく撥水していることを示す。

3.課題
(1)翅の撥水性は部位、種により異なるのか
(2)その撥水要因とは
それぞれ(A)水接触角、(B)滑落角の2つの観点で調査した。

4.実験方法
(1A)水接触角は、2.5µLの水を翅に滴下し、真横から撮影した接触幅と水滴の高さから計算した。
(1B)滑落角は、2.5µLの水を翅に滴下し、鱗粉の生えている向きの順目または逆目方向に翅を傾け、水滴が滑落し始めた傾斜角度を計測した。
(2A,2B)電子顕微鏡により翅表面を観察し撥水要因を分析した。

5.結果と考察
(1A)測定した全翅、全部位において水接触角は150°以上あり超撥水性を有していた。
(1B)順目の方が逆目より滑落角は小さく、滑落角の差は翅の表より裏の方が大きかった。
(2A)チョウの翅は鱗粉と鱗粉表面により大小の凹凸構造を有しており、鱗粉表面は間隔1.5∼2.5µmの縦筋と間隔0.5~1.5µmの横筋により網目構造をなしていた。これにより表面積が増え超撥水を実現していた。
(2B)鱗粉の生えている角度が、翅の表の方が裏より大きかった。

6.応用例
鱗粉は、網目構造により通気性がよく、順目方向に液滴除去性をもつ。さらに鱗粉はハスの葉より軽い点でも優れている。これらの構造を応用すれば撥水性や通気性、軽さを兼ね備えた傘やレインウェア等の製品の開発に役立てられると考えた。


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