| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-37 (Poster presentation)
新潟県のトゲソ(トミヨ属淡水型 Pungitius sinensis)は雄が水草等を用いて巣作りを行い独特な求愛行動で雌を誘い、産んだ卵を雄が世話をする珍しい魚として知られているが、五泉市、新発田市、胎内市の3地点に限られており、その環境も清流環境が急変しているため、絶滅の危機に瀕している。そこで理科部では、2015年から5年間、五泉市にて保全を目的に生物個体数調査、環境調査を行っている。
生息している用水路を10mで仕切りその範囲内で10分間 2人で生物を捕獲し個体数計測を行った。2015年では、5地点でトゲソが生息していたが、現在はそのうち1ヵ所でのみ確認されている。また、この地点も2018年には周辺の樹木が伐採され、2019年にはその場所で太陽光発電の為の工事が入り川の底質が砂地から泥地へと変化した。
この地点の調査開始当初は月1回の調査でトゲソの個体数は平均2個体だったが、今年度の調査では平均4個体確認することができた。同年の8月の調査では13個体と今までの調査で最も多くの個体が確認できていることから、多少増加傾向にあると考えている。スナヤツメは調査開始時と比較すると平均8個体だったが今年度は平均11個体確認できており個体数は増加傾向にあると考える。一方、ドジョウは調査開始時平均15個体確認したが、今年度は平均12個体であり調査開始時と比較して約27%減少し、アメリカザリガニも2015年には平均8個体であったが今年度には平均6個体で約31%減っていることから、ともに減少傾向にあると考える。
樹木の伐採や底質の変化はあったものの、水草の変化はなく、絶滅危惧種であるトゲソ及びスナヤツメの個体数には今のところ影響が見られない。調査中に見つけたアメリカザリガニは駆除をしている。この状態が維持できれば、この地点はトゲソの生息地として今後も繁殖が期待できると考える。