| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-45  (Poster presentation)

コミヤマスミレの謎を追う
Grouping of Viola maximowicziana by molecular phylogenetic analysis

*亀田友弥, 穂積芳季, 田中朝陽, 福本愛奏音(兵庫県立小野高等学校)
*Tomoya KAMEDA, Yoshiki HODUMI, Asahi TANAKA, Akane FUKUMOTO(ono senior high school)

兵庫県中央部にある私たちの学校周辺の山々には約20種のスミレが生育している。ミヤマスミレ節に分類されるものがシハイスミレ、マキノスミレ、フモトスミレなど5種類あるが、その中でコミヤマスミレ(Viola maximowicziana)は他種と違って葉質が大変薄く、また、多毛でビロード状の葉を持ち、また、極端に暗い場所に生育するなど他のスミレと違和感を覚える種である。私たちはミヤマスミレ節と分類されることに疑問を持ち、コミヤマスミレについて、分子系統解析を行い、詳しく調べることにした。  
まず、コミヤマスミレを含む学校周辺に生育するスミレ属数種で葉緑体DNAのmatK領域を増幅し、予備実験を行った。予備実験では、コミヤマスミレだけでなく、マルバスミレ(V. keiskei)の塩基配列も他のミヤマスミレ節と異なり、コミヤマスミレと同じクレードになった。そこで、分子系統樹の位置から推定し、これら2種がツクシスミレ(V. diffusa)にまとまるのではないかと仮説を立て、再度、ツクシスミレを含む系統樹を作成した。ツクシスミレも多毛で少し変わった葉を持つスミレである。
予備実験の結果は予想どおりで、ツクシスミレ、コミヤマスミレ、マルバスミレは同じクレードにまとまった。そこで、私たちはコミヤマスミレ、マルバスミレ、ツクシスミレをいろいろな場所からサンプリングし、今まで本校が行ってきたデータと新しくサンプリングしたスミレを用いて、葉緑体DNAのmatK領域で分子系統解析を行った。その結果、コミヤマスミレ、マルバスミレ、ツクシスミレはどの場所の個体もよくまとまり同じクレードを示した。matK領域は遺伝子をコードし、変異があまりない領域である。この結果から私たちはコミヤマスミレ、マルバスミレはツクシスミレ節に分類されるべきであると考える。現在、私たちはtrnL-F領域での解析を進めている。また、核its領域での分析も計画中である。そのほか、核型や花柱の観察を行い、この3種のスミレ属内の分類を明らかにしていきたい。


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