| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-47 (Poster presentation)
旧制高校の流れをくむ武蔵高等学校中学校には、1920年代の学校創立期に集められた貴重な標本が多数保管されている。本研究では、この1つである笹岡久彦氏の蘚苔類コレクションについて整理、研究を行った。笹岡久彦氏は日本のコケ研究の先駆者のひとりで、氏のコレクションは国立科学博物館などいくつかの研究機関に収蔵されていることが知られている。標本は2つの箱に分けて収納されており、全部で729点あった。紙の封筒の様な包装にそれぞれラベルが貼られており、ラベルにはNo.、R.No.、産地、学名、採集日、採集者、L.No.の記載欄があった。この書式は国立科学博物館が所有するものと一致した。現在までに210個のラベルのデータ起こしが終了し、このうち9割以上が台湾やヨーロッパ、アメリカなどの外国産標本で構成されており、残りは北海道などの国内産標本であることが明らかになった。採集年はもっとも古いものは1865年であり、19世紀後半の標本を含むことが分かった。台湾以外の外国産標本はすべて笹岡氏以外が採集したものであり、笹岡氏が誕生する以前の標本も含まれていることから、笹岡氏は海外の研究者との標本交換などによって外国産標本を手に入れていた可能性がある。また、本コレクションは現時点で33個のcotype specimen(アイソタイプ標本)を含んでいる。アイソタイプの可能性がある標本を含む笹岡コレクションの再発見は蘚苔類研究において大変重要な発見であると考えられる。今後はなぜこのようなコレクションが武蔵高等学校に収蔵されていたかを調べていく。