| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-51  (Poster presentation)

照葉樹林の小ギャップにおけるパイオニア種の侵入と成長
Invasion and Growth of Pioneer Species in a Small Gap in a Laurel Forest

*西口舞花(神戸女学院高等学部)
*Maika NISHIGUCHI(Kobe College High School)

林冠が閉鎖した森林の林床では光強度が弱く、そのような環境下で成長可能な植物は高い耐陰性をもつ種に限られる。しかし、倒木などによってギャップが形成されると林床には強い光が届くため、耐陰性の低い種(パイオニア種)の成長が可能となる。
2017年3月、学内の照葉樹林に生育していたコナラが伐採され、林冠ギャップが形成された。同年初夏にはすでに、林冠ギャップ下にパイオニア樹種の実生が多く確認された。これらの種は暗い林床には見られず、伐採木の周辺部から暗い林床にかけて個体数が減少しているように見られた。そこで、パイオニア樹種の成長特性と光環境の関係に興味をもち、特に個体数の多かったナンキンハゼとアカメガシワの稚樹を対象に調査を行なった。
伐採木を中心としてギャップ下と暗い林床を含む12m×11mのプロットを設置し、12トランセクト×11コドラートに分けた。各コドラートにおいて、2種の全稚樹を対象に個体数、樹高、地際直径を測定した。全天写真による開空度を6トランセクトで測定した。また、開空度の異なる6コドラートにて2種の葉を採取し、LMA(葉面積あたりの葉乾燥重量)を測定した。
アカメガシワではナンキンハゼよりも樹高と地際直径が大きい個体が多かった。基部直径あたりの樹高は、アカメガシでは開空度の高い場所でより大きくなっていた。一方、ナンキンハゼではその傾向が見られなかった。アカメガシのLMAは開空度の高い場所でより大きく、ナンキンハゼのそれは開空度による顕著な違いはなかった。これらの結果は、ナンキンハゼと比較してアカメガシワは成長が早く、光強度の違いに対する応答の幅が大きいことを示し、強い光環境を好むパイオニア種としての特徴がより顕著であると考えられる。


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