| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-52 (Poster presentation)
私たちは、他の生物が近くにいることにより、発芽調整が行われるかどうかについて興味を持った。先行研究を調べていく中で、オオバコ種子が種子間でのコミュニケーションにより 発芽調整を行っていることを知り、この研究の追試を出発点とし、更にはこの種子発芽調整機構について詳しく調べてみたいと考え、実験を行った。
底砂1.5gを敷いた縦1.2㎝×横1.2㎝×深さ1.8㎝のプラスチック製のマルチウェルに、オオバコ種子やシロツメクサ種子をさまざまな組み合わせで撒き、水を加えた後、温度25℃、明期:暗期=12h:12hに設定したインキュベーター内で発芽させた。その後、毎日定時に観察し、A:観察種子の平均発芽日数について調査した。実験で用いた種子は、A:観察種子、B:遺伝的に近縁な種子、C:遺伝的に遠縁な種子、D:他植物種子の4種類である。
実験の結果、遺伝的に近縁な種子を近くに置くと発芽日数が長くなり、遺伝的に遠縁な種子を近くに置いても発芽日数は変化がなかった。また、シロツメクサ種子を近くに置くと発芽日数が短くなった。このことから、オオバコ種子は発芽の際、種子間で発芽における協力や競争が行われているのではないか、また、シロツメクサ種子を同所に撒くと、オオバコ種子の発芽日数が早まったことは、シロツメクサ種子が発芽の際に培地を酸性化させていることが原因であり、発芽調整物質の存在が考えられた。そしてその物質は、酸性条件下ではオオバコ種子の発芽調整に働くが、酸性条件下でない場合は働きが抑制されると考えられた。
近縁な種子同士と遠縁な種子同士のそれぞれを酸性培地と中性培地に混合播種した時は、近縁の種子同士を酸性培地に混合播種した時のほうが、中性培地に播種した時よりも平均発芽日数が早くなった。これより、発芽調整物質の働きは、培地のpHに影響を受けると考えられる。