| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-54  (Poster presentation)

ザリガニ甲羅上に着生する珪藻の季節変化
Seasonal change of benthic diatom assemblage on Procambarus clarkii

*中野和真, 園田拓巳, 音地晴介, 中捨克兜(海城中学高等学校)
*Kazuma NAKANO, Takumi SONODA, Harusuke ONJI, Katsuto NAKASUTE(Kaijo school)

珪藻は多くの水域に普遍的に出現する植物プランクトンであり多くの研究がなされているが,生物体表に付着した珪藻に着目した研究は少ない.本発表では,特に研究の少ない淡水域の生物体表に付着する珪藻相やその細胞数を明らかにすることを目的として,アメリカザリガニ(Procambarus clarkii,以下ザリガニとする)甲羅上の珪藻群集の季節変化を調査した.
調査は2019年の5月,8月,10月,11月に行った.調査に用いるザリガニは埼玉県所沢市の水田状を呈する溜め池で採集した.珪藻は採集したザリガニの頭胸部の甲羅をブラシで擦ることで採取した.試料は珪藻の被殻洗浄処理後,永久プレパラートを作成した.対照試料として泥上の珪藻もピペットを用いて採取し,同様にプレパラートを作成した.作成したプレパラートを用いて,1㎟に付着している珪藻の細胞数を調べた.またザリガニ甲羅上の珪藻についての先行研究である(Flasco et al. 2018)の結果をもとに“ザリガニ甲羅上の珪藻群集は,泥上の珪藻群集と似た種組成である”という仮説を立て,作成したプレパラートを検鏡し,珪藻の種組成を調べた.
珪藻の1㎟あたりの細胞数に関して,ザリガニ甲羅上では100〜300細胞程度であったのに対し,泥上では100000〜300000細胞程度であった.またザリガニ甲羅上の珪藻の細胞数は,季節によって大きく増減し5月から11月にかけて減少した.一方泥上では増加傾向にあった.さらにザリガニの個体ごとに珪藻の細胞数には差があることがわかった.これらの差が生じる要因としては,ザリガニが水温の高い時期に活発に脱皮することなどが考えられる.
珪藻の種組成に関して,どの季節でもザリガニ甲羅上ではNavicula属の珪藻が優占した.泥上でもNavicula属が優先することが多く,それに加えてSurirella属が優占することがあったが,ザリガニ甲羅上と泥上の種組成に明確な違いは見られなかった.


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