| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-55 (Poster presentation)
人間の活動が拡大するのに伴い、自然界に大きな影響を与えている。そのひとつに移入生物の問題がある。帰化植物も移入生物のひとつであり、日本ではセイヨウタンポポなどが各地に定着している。外来タンポポは不完全な花粉しか作らないため、雑種を作らないと考えられてきたが、実際には受精能をもつ花粉がまれにできることがある。これによって、地理的に隔離されていた在来タンポポとの間で自然では起こらない遺伝子の交流が起こってしまう。現在、全国各地で外来タンポポが在来種との間で雑種を形成している事例が報告されている。それらの外来帰化タンポポは交雑によって在来種の遺伝的特性を取り込み、長い時間をかけて在来タンポポが形成した日本の環境に適応的特性を強奪し、在来種の生育地域に侵入をしていると考えられている。我々は、地元地域の岐阜県西濃地区にどのようなタンポポ属が生育しているのかを明らかにするために調査を行うこととした。
西濃地区内の垂井町を500m四方の区画に分け、タンポポが生育している地点から葉と花序を採集した。採集したタンポポは、総包外片の反り返りの程度から形態的に在来種か外来種かを判定し、その結果に基づいて採集地点における外来タンポポの侵入度を表すマップを作成した。外来タンポポの特徴を示す個体が雑種であるかを形態的に判定することは困難であるため、葉からDNAを抽出し、核ゲノムと葉緑体ゲノムの特定領域を増幅することで採集したタンポポを解析した。
本調査によって、耕作地のあぜ道には複数種の在来タンポポが生育しており、住宅地や幹線道路、鉄道沿い、護岸工事が行われた河川の堤防には外来タンポポが多いという結果が得られた。このように岐阜県西濃地区における在来タンポポと外来タンポポの生育に関して一定の傾向が分かり、今後地元地域の生物多様性を維持するために必要な情報を収集することができたと考えている。