| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S02-1  (Presentation in Symposium)

水資源モデルH08の開発と展開
Development and applications of the H08 water resources model

*花崎直太(国立環境研究所)
*Naota HANASAKI(NIES)

 現在地球には70億をこえる人間が住み、年間4000km3超(全河川流量の1割に相当)という大量の水を取水している。人間水利用はもはや地球水循環系の主要な構成要素である。ゆえに、取水や貯水池(ダム)操作といった人間水利用も、自然科学の対象範囲外と無視するのではなく、蒸発や流出などの自然水循環要素と同様に位置づけ、地球水循環の研究対象としていく必要がある。
 報告者は全球水資源モデルH08 (Hanasaki et al. 2018, HESS)の開発に取り組んできた。このモデルは世界の陸域を、緯度経度0.5度(約50km)の格子に分割し、自然の水循環過程(降水の蒸発と流出への分離や流出の河道に沿った流下など)や、人間の水利用過程(田畑への灌漑、貯水池の操作など)に関する計算を、1日単位で実行する。これにより、上流の水利用が下流の水資源量を制約するといった事象をシミュレーションに表現することができる。
 H08は地球規模の水循環と水利用を解析するために開発されてきたが、近年、特定の流域を対象とした適用も盛んに行われている。花崎ら(2018, 土木学会論文集)では約2kmの空間解像度で日本の九州に適用した事例が紹介されている。地球規模のモデルが、個別の流域の水の流れをどこまで捉えられるか、現在までに得られた知見を紹介する。
 H08はマニュアル、ソースコード、入力データが公開されている。詳細はウェブサイト(http://h08.nies.go.jp/h08)をご覧いただきたい。


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