| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S02-2 (Presentation in Symposium)
河川を流れる水資源はさまざまな生態系サービスの基盤をなしている。その評価には流域全体を面的にとらえ土地利用の空間的異質性を考慮したうえで流量パターンを計算する必要がある。そのためには気象学や水文学のモデルを統合した陸域モデルを用いることが求められ、それが生態学者にとってのハードルとなっている。演者らは、水資源モデルH08を日本の流域に適用することで、流域圏をとりまく様々な環境変化が河川流量のパターンにどのように影響するのかについて調べている。モデルの挙動を確かめる先行実験の一環として、森林伐採や都市化が河川流量やその時空間変動に与える影響を調べた。本講演では、その実験の結果を踏まえ、河川流量の変動パターンは、降水量の変動、流域の都市化の程度、森林率、河川の分岐などの形状などの特徴による複合的な要因によって説明できることを示す。さらに降水量の平均を固定したまま変動だけを増大させたり減少させたりするシミュレーション実験によって、降水量の変動に対する河川流量の応答はその流域の土地利用様式によってどのように異なるのかを示す。加えて、これらの解析の枠組みにどのように生物多様性や生態系の要素を組み込み、生態学的な展開につなげていくのかについて展望を述べる。また、陸モデル研究と格闘し、データの入手からシミュレーションまでを独力でチャレンジしてきたなかで得られた教訓についても共有したいと考えている。