| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S02-4 (Presentation in Symposium)
本セッションでは生態学の中でも特に流域生態学や湿地生態学の分野において非常に強力なツールである水文モデルを取り上げ、その役割と考慮点について考えたいと思います。
古くから水文モデルは、水文学自体や土木分野、また水資源や防災の世界で利用されててきました。勿論初期段階はHydrologyつまり水の動態に特化して河川を一次元的な水路とみなし流量の変動を再現する事を目的としてモデルは進化してきました。現在もその進展は留まっておらず、流量についても、大気陸面過程や地下浸透モデル、また空間的な拡散モデルまでも統合した非常に複雑なシミュレーションが可能となっています。
しかしここで問いたいのは、生態学に関わる皆様が(当然私も含め)そのアルゴリズムや再現計算の結果を「生態学の新たな知見を得る為に使いこなしているのか?」という点です。水生生物の生活史を左右するから、出水のイベントが多様性に影響するから、水温が予想できそうだから・・・、といった希望が優先するあまり、再現計算の過程自体がブラックボックス化してはいないでしょうか?
かく言う私自身も、興味本位で水文モデルに首を突っ込み、データ集めから現地調査まで本当に膨大な時間を費やし、その挙句結果は非常に単純すぎた!!。という経験を多くしてきました。
今回は主にメコン川で行った研究事例を紹介しつつ、おそらく私よりもより水文モデルに詳しい皆さまと、再現計算の役割と考慮点(大事な要点)を議論できればと思います。