| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S05-1 (Presentation in Symposium)
群集内部には様々な生物相互作用が存在する。その中でも、「片利関係」関係は、捕食-被食、寄主-宿主関係のように一方向的な関係で、増殖観点からは片方だけがメリットを得るので「片利」と呼ばれる。しかし、現在、適応進化の唯一の理論である自然選択説では、瞬間増殖率の大きな遺伝タイプが集団中に広がるとされている。これは生活空間を含む資源が無限にあるときは常に成立するが、実際の環境資源は、外部からの流入を含めてもある時点では有限であり、その下で増殖効率だけを追求する進化は、残り資源が少なくなっても、その資源をより消費し、多くの子を産むタイプが自動的に選ばれてしまうため、資源枯渇を招き存続できないだろう。密度効果の存在により絶滅が防がれる、という反論を頻繁に聞くが、密度効果がなぜ滅びない関数形を取るのかは自然選択では説明できない。生物のほぼ全ては、他の生物と何らかの相互作用の下で生きており、群集の一部となっている。40億年間生物が、自然選択により利己的な進化をしているにも関わらず、絶滅せずに遺伝ラインをつないできたことを考えると、生物間関係が絶滅しやすい関係であるときは絶滅により淘汰され、群集内の生物関係は存続性について最適化されると考えられる。つい最近TREE誌に、我々が「永続選択」と呼ぶ、この進化プロセスによって地球全体の生態系=「ガイア」が存続性に向けて最適化されるという論文が公表された(TREE,2018,33,8)。この考え方に立てば、群集内の生物関係もまた、出来るだけ群集が滅びにくいように最適化されるはずである。本公演では、小群集の一つであるヨモギヒゲナガアブラムシ-アリの共生系において、各参加者が自然選択により利己的な繁殖戦略を進化させる結果、群集全体の安定性、存続性が高まり、存続最適な関係性セットが進化する、という仮説を検証する事を試みる。