| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S08-2  (Presentation in Symposium)

群落光合成モデルを導入したサイズ構造モデル
A size-structured model incorporating canopy photosynthesis model

*横沢正幸(早稲田大学)
*Masayuki YOKOZAWA(Wasada University)

自然界での植物群集は様々なサイズ(重量、高さ、直径)および樹形を持つ個体から構成されており、個体間で光、養分などをめぐる競合状態にある。そのような複雑なシステムにおいて、競合・共存過程がどのように生じているかを研究することは植物生態学上の興味深い問題の一つである。群集における内的および外的環境に応じて、枯死も含めてサイズごとの個体数(サイズ頻度分布)がどのように時間変化するかがサイズ構造モデルによって記述される。そこでは群集動態は個体がサイズクラス間を遷移する確率過程の結果と見なされ、連続サイズ近似の下では、サイズ変化の1次の近似で連続方程式、2次までの近似でいわゆる拡散方程式(Fokker-Planck方程式)として定式化される。そして、サイズに対する1階微分項の係数は遷移速度の平均、2階微分項の係数はその分散を表現する非線形偏微分方程式であり、サイズクラスを離散のまま扱った行列モデルと互いに変換可能であることが証明されている。本講演では、群集内で個体の置かれた環境の定量化とその応答過程がサイズ構造モデルに実装されてきた研究経緯を述べる。はじめに群落光合成理論に基づいたサイズごとの平均成長速度、すなわち上述のサイズに対する1階微分項の係数の具体的定式化について、そしてそのモデルから得られた群集内における競合関係などに関する研究、さらに大気との顕熱、潜熱といったエネルギー交換ならびにH2O、CO2といった物質交換過程の詳細を組み込んだモデルの高度化(MINoSGI)について、その概略を紹介する。最後に、サイズ構造モデルの短所である空間不均一性情報の取り込みなどについて、今後の改良・拡張に向けた提案を行う。


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