| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S08-4  (Presentation in Symposium)

光競争と地下部競争を導入したサイズ構造モデル
A size-structured model incorporating light competition and underground competition

*中河嘉明(滋賀大学)
*Yoshiaki NAKAGAWA(Shiga University)

植物の競争と群集ダイナミクスに関する理論研究の流れは大きく二つに分かれる。1つはDavid Tilmanらの植物の種間競争と種多様性研究の流れであり、もう1つはMonsi & Saeki (1953)に端を発する群落光合成モデルやサイズ構造モデルによる研究の流れである。これら2つの研究の流れは共に植物の競争と群集ダイナミクスに関するものだが、扱っているプロセスや解像度が異なる。前者は主に土壌養分をめぐる競争を扱い、個体群を均質な集団とみなして種レベルの相互作用から群集ダイナミクスを調べる傾向がある。後者は主に光をめぐる競争を扱い、葉面積の垂直分布や個体サイズ分布といった個体群内の不均質性を重視して群集ダイナミクスを調べる傾向がある。本研究は、これら2つの研究の流れを繋ぐことを目指す。まず、光競争と土壌養分競争の両プロセスを導入した群集モデルについて考える。このようなモデルでは、土壌養分が少ない条件下では植物は主に土壌養分競争をするが、土壌養分が多い条件下では植物は主に光競争をする。また、土壌養分競争は光競争に比べてサイズ非対称性が低く、個体サイズが小さい種が絶滅しにくい。このため、土壌養分が少ない条件下では、より多くの種が存続可能になる。しかし、従来のこの種の群集モデルでは個体群内の不均質性を考慮していない(DeMalach et al. 2016)。そこで、我々はこの群集モデルをサイズ構造モデル化し、個体サイズ分布を扱えるようにした。さらに、葉面積の垂直分布も考慮できるように、Yokozawa & Hara (1995)が提案している、種ごとの葉面積の垂直分布を考慮した光競争モデルを導入した。本発表では、このモデルのシミュレーション結果から、様々な土壌養分濃度や光環境条件下で、葉面積の垂直分布・個体サイズ分布・生産性・存続可能な種数がどのような関係にあるのかを議論する。


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