| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S13-5  (Presentation in Symposium)

土壌有機炭素分解に対する長期的な温暖化の影響評価
Evaluation of long-term soil warming effect on soil organic carbon decomposition

*寺本宗正(国立環境研究所), 近藤俊明(国際農研), 梁乃申(国立環境研究所), 曾継業(国立環境研究所), 中根周歩(広島大学), 小嵐淳(原子力機構), 安藤麻里子(原子力機構), 荒巻能史(国立環境研究所), 冨松元(国立環境研究所), 趙昕(国立環境研究所)
*Munemasa TERAMOTO(NIES), Toshiaki KONDO(JIRCAS), Naishen LIANG(NIES), Jiye ZENG(NIES), Kaneyuki NAKANE(Hiroshima Univ.), Jun KOARASHI(JAEA), Mariko ATARASHI-ANDOH(JAEA), Takafumi ARAMAKI(NIES), Hajime TOMIMATSU(NIES), Xin ZHAO(NIES)

 土壌呼吸は土壌有機炭素の微生物による分解(微生物呼吸)と植物根の呼吸(根呼吸)から成る。2008年の時点で、全陸域の土壌呼吸は炭素換算で98Gtとも推定されており、微生物呼吸はそのうち半分以上を占めると考えられている。微生物呼吸は、温度の上昇に対して指数関数的に上昇する性質をもつため、地球温暖化によって、土壌から排出される二酸化炭素の量が増加し、地球温暖化を一層加速させる可能性が懸念されている。しかしながら、それを検証するためのフィールドにおける長期連続観測データは、非常に限られているのが現状である。
 そこで本研究では、温暖化が土壌有機炭素分解に与える影響を長期的に評価するため、東広島のアラカシ林に国立環境研究所が独自に開発した自動開閉チャンバーシステムと、土壌を温暖化するための赤外線ヒーターを設置し(2007年 9月)、以降連続的に土壌CO2フラックスを観測した。ヒーターによる土壌の温暖化操作は、2007年11月より開始した。チャンバー周辺は深さ40 cmまでチェンソーで根切りを行った後、塩ビ板を挿入することで根の侵入を防ぎ、微生物呼吸のみを測定した。温暖化を行わない対照区と温暖化区の微生物呼吸量を比較し、温暖化が微生物呼吸に与える影響を長期的に評価した。
 温暖化によって増加した微生物呼吸量の割合(温暖化効果)は、同様の手法によってアジアモンスーン地域の森林において行われた報告よりも相対的に小さかった。それには、本サイトにおける土壌が夏季に乾燥影響を強く受けることが関わっているものと考えられた。しかしながら、欧米における報告とは異なり、約12年の温暖化処理を経ても温暖化効果は低減の傾向を示さなかった。本講演では、温暖化効果の年々変動に関する要因や、温暖化効果が長期間維持されたメカニズムに関して議論する。


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