| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S14-2 (Presentation in Symposium)
日本の氾濫原は、古くより人間活動によって水田化されてきた。氾濫原を主たる生息場とする魚種(氾濫原性魚類)は、その人的な環境改変に対し、水田・水路を代替的な氾濫原環境として利用するようになったとされる。しかしながら、近年の圃場整備や、水路のコンクリート3面張化などの影響で、その生息環境は劣化し、氾濫原性魚類の多くは近年、危機的状況にあると言われている。ここまでは、良く耳にする話であるが、それ以外に新たな脅威はないのか?
平成29年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨、令和元年8月豪雨や台風19号など、最近、激甚化した豪雨災害が頻発し、各地で河川の氾濫や浸水被害が起きている。人的被害ばかりに目が行くが、これらの激甚化した災害は氾濫原性魚類の生息に負の影響を及ぼしているのだろうか?また、我々がまだ気が付いていない気候変動による影響は存在しないのか?
演者は、九州北部を中心に河川・農業用水路で、魚類の分布と生態・生活史研究を長年行っている。また、応用生態工学会の災害調査団として、平成29年7月九州北部豪雨では、河川の氾濫・浸水被害が発生したエリアにおいて、災害発生後の魚類の生息状況の調査を行っている。それらの調査で得られた知見のうち、かつての人間の水田開発と魚類の種多様性、絶滅・非絶滅地域の大きな相違、近代化した農地整備の影響、最近の外来植生の脅威、洪水氾濫の影響、気候変動に伴う新たな脅威の可能性など、時間の許す限り紹介したい。