| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S23-1 (Presentation in Symposium)
北半球に自然分布するサケの仲間は、大海を回遊し、大きく成長したのちに、生まれ故郷の川にもどり繁殖する。それらは漁業や釣りの対象として人々に古くから利用されてきた。一方、ほとんどのサケ科魚類の生活史には、海へ回遊する「降海型」のほかに、川で一生を過ごす「残留型」も存在する。降海型は海で豊富な餌を利用して大型化するのに対し、回遊しない残留型は小型のまま早熟する。オスは残留型と降海型の両方が見られ、メスは大部分が降海型となる例が多い。このような生活史多型は、川での成長条件に依存した条件戦略であると指摘されており、成長と残留型の出現頻度に関する研究は多数あるが、その進化的機構をクリアーに示した研究は決して多くない。本発表では、極東アジア固有のサクラマスを例にして、回遊が生じる至近的要因と究極要因の関係を論じることで、回遊現象の根源的な理由に迫りたい。