| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
シンポジウム S24-5 (Presentation in Symposium)
東洋区~オーストラリア区の熱帯~亜熱帯に掛けてモクレン科、ヤシ科、サトイモ科の花から100種以上のショウジョウバエ科タロイモショウジョウバエ属のハエが見つかっている。このうち生態研究が進んでいるのはサトイモ科を訪花するグループである。サトイモ科では125属約3750種が知られ、仏炎苞に囲まれた肉穂花序を作る。原始的な種の個花は両性花だが、派生的な種では単性花(雌花か雄花か)に分化する。これらの派生的な種では、肉穂花序の各部(熱や匂いの放出に関係すると考えられる付属体、雄蘂が並ぶ雄花序部分、花粉を出さなくなった雄花と考えられる仮性雄蘂、雌蘂が並ぶ雌花序部分など)や仏炎苞が、匂いの放出、発熱、遮光、仏炎苞の開閉による空間の創出や遮断などを協調的に分業する。本発表では以下の話題を提供する。(1)サトイモ科植物の送粉のモード(甲虫媒かハエ媒か)による花の形質の違いの比較及びサトイモ科植物とタロイモショウジョウバエとの緊密な送粉共生、(2)クワズイモ(Alocasia odora)花序の各部から放出される揮発性有機化合物とハエの訪花行動の対応、(3)クワズイモショウジョウバエ(Colocasiomyia alocasiae)とニセクワズイモショウジョウバエ(C. xenalocasiae)が花からのシグナルを受容すること関わる形質の特徴、(4)仏炎苞が作り出す空間構造がハエの訪花行動や交尾行動に与える影響についての最近のアイデア。