| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S27-1  (Presentation in Symposium)

趣旨およびプロジェクト概要の説明
Introduction of transdisciplinary project

*奥田昇(地球研)
*Noboru OKUDA(RIHN)

 社会経済活動からリンや窒素が自然界に過剰に排出されることによって生じる「栄養バランスの不均衡」は、富栄養化や生物多様性の損失など地球上の至るところで深刻な環境問題を引き起こしている。これらの問題は流域スケールで顕在化し、健全で文化的な暮らしの基盤を支える生態系サービスの損失を招くと危惧される。さらに、流域内では、地域固有の社会的課題が富栄養化や生物多様性消失の問題と複雑に連環する。このような背景を踏まえ、地球研プロジェクト「生物多様性が駆動する栄養循環と流域圏社会-生態システムの健全性(2015-2019年度)」は、水・物質循環の基本ユニットである流域に焦点を当てながら、地域と流域の課題解決を通して、流域圏社会-生態システムの健全性を向上するガバナンスのアプローチを提案する。制度や技術による問題解決を図ってきた日本の琵琶湖流域、および、人口増加と経済発展によって環境問題が深刻化するフィリピンのラグナ湖流域を比較対象として、住民が地域の課題解決に取り組むことが、結果として、流域の環境問題の解決に結びつくよう、住民・行政・研究者など社会の多様な主体が協働する「流域ガバナンス」のしくみとその有効性を検討する。
 本シンポジウムでは、地域に寄り添い、身近な自然を守る活動を内発する「虫の眼」の調査と流域のマクロな視点から流域の健全性を構成する3つの要素(生物多様性・栄養循環・しあわせ)の空間パタンを見える化する「鳥の眼」の調査により、異なる階層の主体間でコミュニケーションを促す流域ガバナンスの事例を紹介する。生態学が異分野連携や社会協働において果たす役割について議論したい。


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