| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S27-7  (Presentation in Symposium)

琵琶湖とラグナ湖の流域ガバナンスの比較研究から何が得られたのか?
What findings have been obtained from a comparative study of watershed governance between Lake Biwa and Laguna Lake?

*谷内茂雄(京都大)
*Shigeo YACHI(Kyoto Univ)

私たちは琵琶湖流域で蓄積された知見をもとに、新たに野洲川流域における超学際的調査を通じて、流域ガバナンスの骨格となる考え方とプロセスを検討してきた。しかし、琵琶湖流域と大きく異なるラグナ湖流域の調査が進んでいくにしたがい、日本の琵琶湖流域の現実の中から手探りで見つけてきたやり方、特に、「栄養循環‐生物多様性-地域コミュニティ」とつなげて流域の問題を捉える「歯車仮説」では、うまくフィリピンの現実を捉えられないことがわかってきた。端的には、ラグナ湖支流域のひとつであるシラン‐サンタ・ローザ流域では、かなりの生物多様性がすでに損なわれていたこと、住民の生物多様性への関心が低いことなど、生物多様性が地域活動の触媒となりにくいことが明らかになったからだ。そのため、ラグナ湖流域では、現場の現実に合わせて上記のつながりの中の「生物多様性」の部分を「身近な自然」や「地下水」に修正していく必要があった。
 この発表では、これまでの発表者の内容を踏まえて琵琶湖流域とラグナ湖流域の知見を比較検討した上で、「流域―支流域―地域コミュニティ」という流域の階層性と流域を構成する地域コミュニティの多様性を前提として、国や地域に応じた流域ガバナンスをどのように構築していくことができるかという課題について、私たちが検討した結果を報告する。また、この研究が達成できなかった重要な課題についてもあわせて報告する。


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