| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨 ESJ67 Abstract |
自由集会 W07-1 (Workshop)
環境条件と種間相互作用はどちらも植物種の分布を規定する要因とみなされている。しかし、日本の半自然草地の草本群集においてこの両者の役割を同時に推定した研究はまだない。本研究では、静岡県中西部の茶草場(茶園の敷草を刈るための半自然草地)において、分布を規定する要因の推定を試みた。
植物種の分布の調査は、2012年7月から2013年6月に行った。静岡県菊川市および島田市の茶草場15カ所で、コドラート(2.25 m2)を2~12個ずつ設置し、コドラート内に出現した植物、開空率および土壌条件を記録した。多変量プロビットモデルを利用して、各植物種と環境条件との関係ならびに植物種間の相関関係を推定した。調査の結果、複数の植物種と、土壌中の硝酸態窒素含量およびカルシウム含量との間に関係性が認められた。植物種間の相関関係については、相関係数の95%信用区間に0が含まれてはいたものの、セイタカアワダチソウと6種の在来種(スギナ、ヤマノイモ、オニドコロなど)との相関係数は負の値であった。
セイタカアワダチソウと在来種との関係を検証するため、セイタカアワダチソウが優占する茶草場において本種を除去する実験を行った。セイタカアワダチソウの除去(処理区)と無処理(対照区)の2つの処理を、9反復の乱塊法によって試験した。実験の結果、多変量プロビットモデルからセイタカアワダチソウと負の関係性が示唆された6種のうち2種(スギナとヤマノイモ)が、わずかであるが処理区で増加した。セイタカアワダチソウとの種間競争の影響が示唆された。