| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W12-1  (Workshop)

FSC生態系サービス森林認証の概念
Concept of the FSC forest certification for ecosystem services

*北山兼弘(京都大学)
*Kanehiro KITAYAMA(Kyoto Univ.)

生物多様性保護や炭素貯留などの生態系サービスは地理的に広い範囲に恩恵をもたらす。このため、広範囲の人々が生態系サービスへの支払いに参加し、森林保全を支援する仕組みが求められてきた。そのような時代的要請を受け、FSC(森林管理協議会)は生態系サービス森林認証を2018年に新たに開始した。FSC森林認証は既に世界中に浸透している認証制度であるが、新制度はさらに森林が持つ5つの生態系サービス(炭素貯留、生物多様性保護、水源涵養、土壌保全、レクリエーション機能;木材は主要生産物なので生態系サービスには含まない)に着目し、これらを量的に評価し、内部化することを目的に持つ。これらの生態系サービスが、木材生産にも関わらず、劣化することなく維持されていると、木材生産者が生態系サービス保護の管理効果を「謳うこと」が許される。既存の森林認証から独立した制度というよりも、森林認証に加え、被認証者である木材生産者が生態系サービスに配慮していることを保証する制度である。これにより、木材生産者は生態系サービスへの支払いを通じた経済便益を得ることが可能となるので、責任ある森林管理が一層浸透するものと期待されている。さらに、より多くの利害関係者が森林保全(特に国境を越えた熱帯林の保全)に参加することが可能となり、森林保全が進むと期待されている。本制度が浸透するためには、以下の3つを解決しなければならない。1)概念の普及、2)政策的支援、3)鋭敏、頑健かつ低コストの生態系サービス広域評価方法の確立と木材生産者への普及。既存の森林認証の基準が往々にして指導的性格を持ち(例:生物多様性保護のために、何々の森林管理をしなさい)、基準を遵守していることの証明が比較的容易であったのに対し、新たな制度では生態系サービスを科学的に評価する点が特徴である。このため、特に3点目の手法開発が成功の鍵を握る。


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