| 要旨トップ | ESJ67 自由集会 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W27  3月8日 9:00-10:30 Room I

ため池の生物多様性の危機 ― 全国で進むため池改廃問題
Biodiversity crisis of irrigation pond: national wide issue of irrigation pond destruction in Japan.

西原昇吾(中央大学), 白川勝信(芸北 高原の自然館), 西廣淳(国立環境研究所)
Shougo NISHIHARA(Chuo University), Katsunobu SHIRAKAWA(GMNH), Jun NISHIHIRO(NIES)

農業用ため池は、水の安定供給や文化・景観の維持という生態系サービスの点だけでなく、生物多様性の保全の観点からもきわめて重要な場である。大規模農業用水の普及や農家の高齢化等に伴う管理放棄、また侵略的外来種の侵入等の影響により機能や多様性の低下したため池が増加しているものの、全国レベルで絶滅が危惧される動植物の主要なハビタットとなっているため池も少なくない。しかし一年ほど前から、ため池を「廃止」(埋め立てなど)する計画や事例が、各地で急速に聞かれるようになった。広島県では約500ヶ所、石川県では154ヶ所が今年度から廃止されるという。これは、2019年6月の「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」の施行を受けたものである。この法律では、ため池が農業用水での利用と防災の観点からしか捉えられておらず、生物多様性の視点は含まれていない。生物多様性保全をはじめとする多面的な機能を評価せずに、ため池の不可逆な改修や廃止が進むと、大きな社会的な損失を招くことになる。生態学研究者には、研究成果等の情報を社会の様々な主体と共有し、賢明な意思決定の仕組みを共に考えていく役割が求められるだろう。集会では近年のため池をめぐる現状について情報共有し、今後に向けた建設的な議論を行う。
話題提供(予定)
ため池の利用低下が水生植物に及ぼす影響 嶺田拓也(農研機構・農工研)
ため池に生息する絶滅危惧淡水魚類の現状 向井貴彦(岐阜大)カワバタモロコの事例 鈴木規慈(三重大)
トンボ類におけるため池廃止問題 苅部治紀(神奈川県立生命の星・地球博物館)
広島県のため池廃止をめぐる現状 髙田善雄(広島県農林水産局基盤整備部)白川勝信(芸北 高原の自然館)
石川県のため池廃止の現状と対策 西原昇吾(中央大)
総合討論:ため池の自然を未来に残すには 司会:西廣淳(国立環境研究所)
コメント:日鷹一雅(愛媛大) 進藤博文(環境省中部地方環境事務所)


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