| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A01-02  (Oral presentation)

鉱山集積場においてススキが関与したアカマツ実生の生残要因の解明
Elucidation of survival mechanisms of Pinus densiflora by Miscanthus sinensis at a sedimentary site in an old mine

*春間俊克(原子力機構, 筑波大学・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境), 野路建太(筑波大学・生命環境), 土山紘平(筑波大学・生命環境), 盧星燕(筑波大学・生命環境), 升屋勇人(森林総合研究所), 黒澤陽子(岩手連大, 山形大学), 森茂太(山形大学), 富山眞吾(北海道大学)
*Toshikatsu HARUMA(JAEA, Univ. of Tsukuba), Keiko YAMAJI(Univ. of Tsukuba), Kenta NOJI(Univ. of Tsukuba), Kohei DOYAMA(Univ. of Tsukuba), Xiangyan LU(Univ. of Tsukuba), Hayato MASUYA(FFPRI), Yoko KUROSAWA(UGAS, Iwate Univ., Yamagata Univ.), Shigeta MORI(Yamagata Univ.), Shingo TOMIYAMA(Hokkaido Univ.)

研究対象地は秋田県内にある閉山した鉱山の集積場であり、坑廃水処理に伴う中和殿物が集積処分されている。中和殿物には生育阻害の要因となりえるFeが多量に含まれたが、現地ではススキやアカマツ実生の生育が確認された。またススキの内側のアカマツ実生が正常に生育する一方、外側のアカマツ実生には生育阻害が確認された。ススキの内側・外側で生育するアカマツ実生の生残率を1年間調査した結果、内側では73%、外側では30%と差が確認された。枯死個体の観察の結果、生存率の低下要因は植物病原菌による枯死と考えられた。そこで本研究はススキの内側においてアカマツ実生の生残率が上昇する要因の解明を目的とした。元素分析の結果、ススキの内側・外側のアカマツ実生は根に同程度に高濃度のFeを含有していた。根の二次代謝産物の分析の結果カテキンが検出されたため、カテキンがFe毒性を軽減すると考えられたが、内側・外側のアカマツ実生におけるカテキン濃度に有意差はなかった。植物に生息する内生菌は金属耐性を増強することが知られており、調査地のアカマツ実生の根にも内生菌が感染していた。内生菌を分離した結果、内側・外側のアカマツ実生の根からCeratobasidium bicorne及び新種のdark-septa endophyte(DSE)が分離された。一般にC. bicorneは植物病原菌として知られるが、調査地の枯死個体からも分離されたため、調査地でも植物病原性を示すと考えられた。一方DSEには植物病原菌の感染抑制が知られている。そこでDSEに対する植物病原菌の出現率の比を算出すると、外側のアカマツ実生ではDSEの6倍だったが、内側では2倍に抑制されていた。またススキの根から同種のDSEが分離されたため、ススキのDSEがアカマツ実生に感染することで植物病原菌の感染を抑制し、生育初期の生残に寄与する可能性が示唆された。


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