| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨 ESJ68 Abstract |
一般講演(口頭発表) A01-04 (Oral presentation)
多くの鉱山跡地では高濃度の重金属が土壌中に残存し, 植物の定着を困難にしていることが問題となっている. 本研究の調査地である鉱山跡地では, 過去に緑化策としてヒサカキが植林されており, 現在でも広範囲に生育が確認されている. 本研究では, 植林されたヒサカキを対象に含有元素および代謝産物の分析を行い, 重金属ストレス環境下においてヒサカキの有する重金属耐性機構を明らかにすることとした. また, 地下部から内生菌を分離し, 重金属環境における内生菌の耐性や宿主への影響を各種試験により精査した. 調査地のヒサカキ根域土壌は弱酸性を呈し, 高濃度で蓄積が確認された重金属が遊離し, 植物にストレスを与えやすい環境であることが示唆された. ヒサカキは地上部にAl, 地下部にPb, Al, Feを高濃度に蓄積しており, 地下部においては高濃度に検出されたcondensed tanninが金属元素の解毒に寄与していることが示唆された. 予備的な検討ではあるが, PbやFeの局在部位とcondensed tanninの局在部位が一致したことからcondensed tanninのPb解毒への寄与が推測された. 植物の重金属耐性増強に寄与する内生菌の分離を行った結果, 出現率の高い上位3菌種においてsiderophore産生能が確認され, 植物体内の金属元素と錯体を形成し毒性を軽減することで, ヒサカキの重金属耐性に寄与していると示唆された. 主な内生菌であるPezicula属糸状菌は, 分離した個体の根域土壌や地下部のPb濃度が高いほどPb耐性が高いことが明らかとなり, ヒサカキへのPezicula属糸状菌の定着にはPb耐性が関与していることが示唆された. 以上から, ヒサカキは機能的な内生菌と共存し重金属環境で耐性を獲得している可能性が示唆された.