| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A01-05  (Oral presentation)

鉱山跡地に自生するアオキの金属耐性と内生菌Pezicula ericaeの関与
Metal Tolerance in Aucuba japonica Thunb. Naturally Growing at Mine Site and the Functions of Endophyte, Pezicula ericae

*土山紘平(筑波大学・生命環境), 山路恵子(筑波大学・生命環境), 春間俊克(原子力機構, 筑波大学・生命環境), 升屋勇人(森林研究・整備機構)
*Kohei DOYAMA(Univ. of Tsukuba), Keiko YAMAJI(Univ. of Tsukuba), Toshikatsu HARUMA(JAEA, Univ. of Tsukuba), Hayato MASUYA(FFPRI)

調査地である鉱山跡地土壌は酸性を呈し、高濃度のCd、Cu、PbおよびZn等の重金属を含有するため、植物が金属ストレスを受けやすい環境となっている。調査地に自生するアオキは、根に高濃度のZn(500 mg/kg DW以上)およびAl(1000mg/kg DW以上)を蓄積しており、金属耐性を有していると考えられる。鉱山跡地に自生する植物は、植物組織内に無病徴で感染する微生物(内生菌)が根に感染することで金属耐性が増強されると報告されている。アオキの根から高頻度で分離されたPezicula属糸状菌は金属の解毒物質 (シデロフォア) を産生することから、アオキの金属耐性に関与している可能性があるが、その機能は明らかになっていない。
アオキの金属耐性に関与するPezicula属糸状菌の機能を解明するため、アオキの滅菌実生およびγ線滅菌した調査地土壌を用い、接種試験を実施した。その結果、接種区および非接種区ともに高濃度のAlを根に蓄積したが、接種区において毒性症状である根の分岐の減少が確認されたことから、Pezicula属糸状菌がAl毒性を軽減する可能性が考えられた。しかし、Pezicula属糸状菌が病原菌としての報告もあることから、アオキの防御反応として根の分岐数が減少した可能性も考えられた。今後は、根におけるAlの局在を接種区および非接種区で比較し、Pezicula属糸状菌の感染がアオキの金属耐性に与える影響を詳細に明らかにする予定である。同時にPezicula属糸状菌が産生するシデロフォアをアオキの根内部で定性および定量し、Pezicula属糸状菌が産生するシデロフォアがアオキのAl耐性へ及ぼす影響を明らかにする予定である。


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