| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-01  (Oral presentation)

季節の異なるドローンの空撮画像を用いた冷温帯落葉広葉樹林における樹冠投影図の作成
Tree crown mapping using aerial images taken by an unmanned aerial vehicle in several seasons on a cool-temperate deciduous forest

*友常満利(玉川大学), 小山悠太(早稲田大学), 吉竹晋平(早稲田大学), 関川清広(玉川大学), 大塚俊之(岐阜大学)
*Mitsutoshi TOMOTSUNE(Tamagawa Univ.), Yuta KOYAMA(Waseda Univ.), Shinpei YOSHITAKE(Waseda Univ.), Seiko SEKIKAWA(Tamagawa Univ.), Toshiyuki OHTSUKA(Gifu Univ.)

樹冠投影図は森林構造やその動態を理解するために重要な情報となる。樹冠投影図の作成には直接作図法と空中写真法があるが、求められる調査面積や精度、使用可能な費用や労力などによって使い分けられている。近年、急速に発達を遂げている無人航空機 (ドローン) は、高解像・広範囲の空中写真を低価格・低労力で取得できることから、従来法と比較して樹幹投影図を得るためのより有用な機材になると期待される。本研究では複雑な森林構造を有する自然林を対象に、ドローンによって得られる空中写真から樹冠投影図の作成を試み、その有効性について議論した。
 調査は岐阜県高山市の冷温帯落葉広葉樹二次林 (調査面積:1ha) で行った。三つの季節 (展葉期、紅葉期、落葉期) において、ドローン (Phantom4) を用いて対象林の真上から複数の空中写真を撮影した。これらを写真測量ソフト (Agisoft Metashaple) を用いてオルソ化し、地理情報システムソフト (QGIS) で解析した。
 展葉期においては、ミズナラやシラカンバ、ダケカンバなど、樹頂が林冠に到達している大径木の樹冠(位置と形状)が、葉やシュートの特徴に基づき特定された。一方で同一・近縁種が隣接した場合、各樹木の樹冠境界の識別は困難であった。しかし、紅葉期においては葉の色づきの差によって、それらも識別が可能となった。また、高木層の葉の一部が落葉したために、コハウチワカエデやノリウツギなど、樹頂が林冠に到達していない小径木においても樹冠の特定が可能となった。落葉期においては、高木・低木ともにほとんどの樹木が落葉したため、各樹木の根元の位置や枝張りが確認できるようになり、展葉・紅葉期に特定された樹冠の識別精度を向上させられた。これらの結果は、冷温帯に広く見られる落葉広葉樹二次林において、ドローンが樹幹投影図を作成するための有用な機材になると同時に、異なる季節の空中写真を得ることが作図のために重要であることを示している。


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